2022年の大河ドラマ「鎌倉殿と13人」が最終回を終えました。大河ドラマは、1年間の長丁場で山場を迎えるまでに時間がかかるので、途中で投げ出すこともあるのですが、2022年は、私の関心のある鎌倉時代の語であり、何より脚本が三谷幸喜さんということで、中だるみもなく、楽しませて頂きました。
最終回が近づくころから、出演俳優が撮影の裏話を語ったり、NHKもその手の番組を多く流したりするので、「そんなところまで、話がつながっていたのか」など、感心すること多数。そんな中、最終回の直前に、「三谷幸喜の言葉 ~鎌倉殿13人」の作り方~」という番組が放映され、三谷幸喜さんが脚本を書く際の裏話、苦労話を語っていました。
その具体的な内容は別にして、三谷幸喜さんの言葉に、私たちが「何かを作り上げよう」とする際、特にビジネスの場において実践すべき点が多いと思ったので、自分への教訓を込めて以下にまとめてみたいと思います。
- 基本をきちんと押さえる
この時代の文献である、「吾妻鏡」を丹念に読み込んでおり、些細で取るに足らない記述を、「面白そう」と感じて題材にもしています。まずは色々と考える前に、基本に立ち返ることの必要性を感じました。
- ずらして考える
何かヒントがないか、アイデアがインスパイアされないかと「ゴッドファーザー」「仁義なき戦い」「スターウォーズ」などたくさんの映画を見たそうです。刺激を少しずれたところから受けようとする姿勢は、ビジネス界で言えば、異業種へのベンチマークに相当するのかもしれません。
また、三谷さんは2010年に「我が家の歴史」というTVドラマを書いたとのことで、これは、長女が優秀なお婿さんを迎えたことから始まる物語で、北条家を昭和の時代に合わせて書いたとのこと。こちらは、時空をずらして考えたと言えるでしょう。
いずれにせよ、「創造性はゼロから生まれるのではなく、既存のものの組合せである」ということばは基本であり、私のような凡人でも「何か作れそうか」という気になってしまいます。
- 軸を明確に持つ
最初にこのドラマにとりかかった時に、「義時・泰時親子の物語、北条家の家族の物語」にしたいと考えたとのことで、最終回を見ても確かにその通りでしたね。やはり、グランドデンザインがあり、戦略がブレないことの重要性を感じます。
また、最初に登場人物の人物像を、北条時政を「憎めないおっさん」に、また源義経をアメリカの軍人のパットン将軍や、大江広元をゴッドファーザーに出演のロバート・デュヴァルのイメージというように明確にしてから書いたとか。こちらも、商品・サービスを考えるにあたっては、そのコンセプトがまず大事だということにつながると思います。
やはり、ポイントとなる部分は、一貫性が安定感を与えることになりますね。
- 状況に応じて柔軟に対応する
撮影スケジュールの変更で、予定の俳優が当日現場にいなかったり、鎌倉時代の茄子が丸いことを知らなかったりで、不都合になった脚本を、機転を利かして変更しています。しかも単なる修正ではなく、面白みを新たに加えた変更となっているところがすごい。倒れてもタダでは起きないという、柔軟性・レジリエンス力を感じました。
また他にも変更が必要な際、以前のストーリーの中で使えそうなネタを再度利用して今とつなげるような工夫もありました。これも普段から様々な場で“種まき”をしておくといざという時に役に立つということで、日常の仕事の中に若干のムダ・遊びがあってもいいのではと感じます。
- 直感を大事にする
歴史上の文献には、女性の名前を書かれていないケースが多く、今回の登場人物の名前を考える際、政子の妹の「実衣」はムーミンのミーから、刺客の「トウ」は豆板醬からなど、自分の感覚で決めたとのこと。左脳だけでなく、右脳を使う必要性が言われますが、こんなところにもその必要性を感じます。
- メンバーをリスペクトする
番組を通して三谷さんが言われていたのは、「このセリフを見て俳優さんが笑ってくれるだろうか」「つまらない台本を渡したら、俳優さんに申し訳ない」といった俳優をリスペクトしている言葉。個々の俳優の個性をつかみ、それを大事にし、その魅力を最大限生かそうとする姿勢が至るところで感じます。やはり、リーダーたるもの、メンバーの力を信じ、その力を十分に発揮させることが重要ですね。
以上、思いつくままツラツラと書きました。
言われていることを分解して考えると何かで自分でも書けそうな気がしますが、でも三谷さんのセンスに加え、集中力・努力・責任感・忍耐力というのには敬服するしかありません。次作がどのような形で発表されるかわかりませんが、楽しみにしています。
追記
ドラマを見て仕事のことを考えるのは「仕事人間」と揶揄されそうですが、「異分野から刺激を得ようとしている」と、良心的に解釈して頂くと嬉しいです。